「ダルタニャン回想録」の内容について

「ダルタニャン氏の回想録」について詳しいことを知りたいのですが。史実の中のダルタニャンが書いた物なんですか?また、三銃士のことが載っていたとのことですが・・・?<1998.6.20 質問/義朝>

 

「三銃士」のまえがきで、デュマが読んだとされる二つの回想録「ダルタニャン氏の覚え書」「ラ・フェール伯爵の覚え書」が紹介されていますが、後者は、デュマが書いた物語そのものを暗示しており、実際に参考にしたのは、この前者の「ダルタニャン氏の覚え書」が中心で、その他に幾つかの回想録「ラ・ポルト回想録」「ロシュフォール伯爵の回想録」などからエピソードを採用したと言われています。

いくつかの研究書や解説によると、この本は元銃士のクールチル・ド・サンドラスによって執筆され、1700年に非合法出版されたそうです。もちろん実在のダルタニャンが書いたものではなく、その頃の政府・宮廷の要人について、あることないこと書き連ねた「回想録仕立ての小説」で、数多くのにせ回想録を出版したサンドラスは、危険な中傷文の作者として何度もバスチーユに入れられたそうです。

話の内容は、ダルタニャンがパリへ上京するところから始まって、実在のダルタニャンの人生をたどり、彼が戦死するマーストリヒトへ向かうところまでとなっています。三銃士の記述は少々相違があり、ダルタニャンはポルトスに誘われて、ポルトスの兄弟アトス、アラミスと共にリシュリューの親衛隊と決闘し、友情を結ぶということになっています。ダルタニャンの宿敵でロシュフォールを彷彿させるロスネーやダルタニャンを暗殺しようとするミレディも登場します。また、王妃のダイヤモンドをめぐるエピソードは存在せず、彼がイギリスに渡ったのは清教徒革命のときに軍務でイギリス王家を助けるためということになっています。

「ダルタニャン色ざんげ」について(回想録邦訳本の内容紹介)「ダルタニャン回想録」の出版情報へ

<回答/19いせざきるい>

参考文献:「アレクサンドル=デュマ」(Century Books 人と思想139)1996年清水書院/発行、620円、ISBN4-389-41139-X
日本語の研究書の中では、回想録の内容はもちろん「三銃士」執筆の背景について、いちばん詳しくて入手が容易な資料だと思います。(よく読むとストーリーの紹介部分でいくつか面白い誤りがあります。「ダルタニャン物語」の読者なら容易に気付くでしょう。)

<三銃士ファンクラブ銃士倶楽部>

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