ローシュフォールのモデル

三銃士研究家のシャルル・サマランの説によれば、デュマは「ダルタニャン回想録」に登場するロスネーをローシュフォールに置き換えて、同回想録の作者サンドラスの別の著書である「ローシュフォール伯爵の回想録」を参考にしたといわれている。この本は1687年にケルンで発行され、1742年に増刷、更に1897年には「リシュリューのスパイ、ローシュフォール伯爵の冒険」というタイトルで再版された偽回想録でベストセラーになった。

実在のモデルとなったロシュフォール伯爵について、ジェラール・ガリらは、1672年に将軍およびロレーヌ地方の総督、1675年にフランス元帥となったローシュフォール公爵のことであろうと主張している。

一方、サマランは、この説ではデュマが「ルイ14世とその世紀」にも記述しているように、ローシュフォール伯爵が1626年にシャレーの陰謀事件と関わったエピソードとは時代が合わないと指摘する。(ちなみに、このブリュッセルへの旅については「ルイ14世とその世紀」から、ポン・ヌフの橋の上で逮捕された事件は「ローシュフォール伯爵の回想録」からのエピソードである。)そんな訳で彼の説によると、リシュリューの本当のスパイの一人が死後ローシュフォールという名を賜ったのだろうというのであるが、本当のところは未だ解明されない謎となっている。

参考文献:
Les trois mousquetaires / Vingt ans apres (Bibliotheque de la pleiade)
Dumas (Alexandre), 1962, Gallimard, ISBN2-07-010180-0
Gilbert Sigaux/注釈・解説

©三銃士ファンクラブ銃士倶楽部/要訳:No.19 いせざきるい>

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