ミレディーのモデル

実在のモデルはカーライル夫人

カーライル伯爵夫人はチャールズ皇太子(のちのチャールズ一世)とアンリエット・ド・フランス(ルイ十三世の妹)の婚約の際に特別大使としてパリへやってきた。彼女が1625年5月に皇太子の結婚式のためにイギリスへ帰国した折りに、おそらくリシュリューは王妃の紐飾りをバッキンガム公爵から奪うという、物語中のミレディーと同じ使命を彼女に託したのだろう。「ローシュフォール伯爵の回想録」(「ダルタニャン回想録」と同様にサンドラスが書いた偽回想録)によると、リシュリューはカーライル夫人がバッキンガム公爵へ寄せている感情を見抜くと、嫉妬心を巧みに煽りたて、アンヌ王妃を陥れるスパイに仕立て上げた。そのため夫人は紐飾りを切り取ってリシュリューに送ったが、それに気付いたバッキンガムが使者を立てて別の紐飾りを王妃のもとへ届けたので、リシュリューの企ては失敗に終わった、ということである。

百合の烙印のモデル

「ローシュフォール伯爵の回想録」にローシュフォールの父が再婚した粉屋の娘、マドレーヌ・ド・コーモンに烙印があったと記述されている。
なお、デュマ書き下ろしの舞台用戯曲「銃士の青年時代」では、オリビエ・ド・ラ・フェールのプロポーズのあとで、司祭のジョルジュが一緒にカナダへ逃げようと望んだのを彼女が拒んだために例の烙印を押されたというエピソードに変えられている。

参考文献:
Les trois mousquetaires / Vingt ans apres (Bibliotheque de la pleiade)
Dumas (Alexandre), 1962, Gallimard, ISBN2-07-010180-0
Gilbert Sigaux/注釈・解説

©三銃士ファンクラブ銃士倶楽部/要訳:No.19 いせざきるい>

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