デュマ&ユゴー特番「よみがえれ!青春の物語」レポート

 

2003年1/24(金)午後10時から(再放送は2/16午後4時から)1時間に渡って放映された、NHKBS2特番「よみがえれ!青春の物語」。番組製作を担当された株式会社アズマックス(「週刊ブックレビュー」など製作)の山野さんが幸いにも銃倶のホームページに目を留めて下さり、昨年11月の初めにいせざきにコンタクトしていただいたご縁で、フランスロケの裏話なども教えていただくことができました。その全貌をここにご紹介します。<レポート/いせざきるい>

●ねらい(企画書より)

1802年、ふたりの男が生まれた。やがてフランス文学を代表する男として二人はフランス・パリで交錯した。片や『レ・ミゼラブル』のヴィクトル・ユゴー。(1802〜85)大詩人の国民的英雄でロマン主義文学運動の中心的存在であった。片や、アレクサンドル・デュマ。(1802〜70)。劇作家として成功の後『三銃士』で爆発的な人気を得た。他に『モンテ・クリスト伯』や『王妃マルゴ』などその名を知らないものはいない。時あたかもナポレオンが王位を簒奪し、大革命後の新たな時代が到来。“自由”を旗頭に街には人があふれ、世俗的欲望が渦巻いた。そして、この二人の文学こそ、その欲望の噴出であったのだ。
番組では、フランス文学の巨匠二人を、ともに生誕200年を迎えたのを機に見つめ直そうというものである。秋のフランス各地に巨匠の痕跡を訪ねる旅をするのは、俳優の児玉清氏と、学習院大学で同窓で、学生時代一緒にフランス語劇をやった、フランス文学者の篠沢秀夫氏。
堅苦しい文学ものではなく、紀行とトークの楽しさを交えながら、世界中で今も読み継がれる名作の魅力と、200年前に生まれた巨匠たちの真の人間像と人生を再発見していく旅である。そして児玉、篠沢両氏が、文学への愛、学生時代から今日に至るまでの人生などを文豪たちの痕跡を巡りながら語り合っていく。

●取材地と番組構成

『三銃士』関係
*マンの町・・・『ダルタニャン物語』の最初の舞台となった町。町の実景+押絵などで、あらすじ紹介。篠沢さんにとって思い入れの深い作品。
*パリ六区カルム・デショー僧院跡・・・ダルタニャンが、生涯の親友たちそれぞれと決闘の約束をした、いわば出逢いの場所。

『レ・ミゼラブル』関係
*パリ・・・ヴィクトル・ユゴー記念館。展示物+押絵などで、あらすじ紹介。地下下水道を歩いてみる。
*ディーニュ・・・ジャン・バルジャンが最初に登場した町。

『モンテ・クリスト伯』関係
*マルセイユ・・・物語の最初の舞台。
*ディフ城・・・要塞のような監獄島。風景+押絵であらすじ紹介。
*パリ・・・モンテクリスト城。

エンディングとしてパリ・パンテオン(フランスロケ:11/16〜24)
*ちなみに取材中の通訳さんは、篠沢教授とは別に雇ったんだそうです。「教授に様々な手配をして頂くわけにも行きません。」と新村氏談。確かにその通りですね。

●フランス文豪への旅・顛末記

「三銃士」ファンの方々に、私たちの作った番組がどのように受けとられたのか、なんとも不安です。ただ児玉清さんと篠沢秀夫教授の“物語”への旅、良い意味であんなに“あどけない旅”の楽しさが少しでも伝わっていれば、こんな嬉しいことはありません。
そこで、その楽しさを倍増させる?旅の顛末記(珍道中ぶり)をここでお伝えします。番組を見ただけでは知ることの出来ないエピソードで、番組の裏に隠されたもう一つの<デュマとユゴーへの旅>をレポートします。

【児玉さん語る「死ぬかと思った!」】

11月16日成田空港第1ターミナルに10:30今回のロケスタッフが全員集合。児玉さん、教授、プロデューサーの私、新村、ディレクターの茅根、カメラマンの越智、見送りで来たアシスタントプロデューサーの山野。数時間後に始まる悲劇を知らずに、全員にこやかに寿司などをほおばっておりました。
12時過ぎに出発ゲートへ。45分後には憧れのパリへ向けてエールフランス機は飛び立つはずだったのですが…。待てど暮らせど機内への案内アナウンスはかからず、「機体整備中です!」を繰り返すばかりです。コーヒー(と、ほんの少しの?ビール)でお腹ががぼがぼ状態の16:30、ようやく満員のエコノミーの座席へ座ることが出来ました。念のため出演のお二人はファーストクラスでスチュワーデスの笑顔に迎えられていたはずです。
離陸。その瞬間、左側翼のすぐそばに座っていた私たちに、バーンという破裂音が聞こえました。30分後に機内アナウンス「左エンジンが壊れちゃったんで、成田空港へ引き返します。そのあとどうなるかは成田の人に聞いてね!うふっ!」というような内容です。17:30成田到着、そのころ私はこれからのスケジュールをどうしよう…ということばかり考えていたのですが、児玉さんは引き返す機内で「そうか、ついに、この時が来たのか。墜落するんだ!墜落するんだ!」との思いが渦巻いていたそうです。
結局、21:55発のパリ行きに潜り込むことが出来、パリ着は現地時間17日のまだ明け切らぬ午前4:30。とてつもなく長い一日でした。(というこの日、実は私の祝うべき誕生日だったのですが…)

【エスカレーターに気をつけろ!】

なんだかパリに着くまでがやたら長くなってしまった。飛ばしていきましょう!
「三銃士」の冒頭部分の町・マン。ここでは無事でした。番組の中でお二人に話しかけて、教授をただの通訳と間違えた地元のオジサンが実はタイプライターのコレクターで、それを見せたくて私とコーディネータが自宅へ連行される羽目になったことぐらい。無事にロケ終了でした。ここは思いもかけず、「三銃士」のたたずまいが残る素敵な町です。観光地でも何でもない所ですが、ただふらっと歩くだけでもファンにはたまらないはずです。
休む間もなくGTV(新幹線)でマルセイユへ移動です。まず出発のパリの駅で児玉さんの受難です。上りのエスカレーターで児玉さんは多くの荷物を持って、突然ふらつき、もう少しで真っ逆さまに転落しそうになるという事態に…。隣のフランスおじいさんとあわてて走り寄った私で何とかささえて事なきを得ました。
実は児玉さんと教授と私は、撮影の待ち時間にけっこうお酒を飲んでいたのです。(撮影に出演者は待ち時間が付き物。スタッフが実景を撮影している時、出番までけっこう待ちます)
3人で“幸せのお酒”と名付けたリンゴのお酒<カルバドス>、これが児玉さんの足にいたずらしたのかもしれません。
そして、教授にも…。マルセイユに到着しても教授はいつものように1人でずんずん歩いて行ってしまいます。あわてて追いかけても、彼はとんでもなく長い下りのエスカレーターに乗ってしまいました。それは「地下鉄行きで間違いですよ!」と叫ぶと、教授は途中から何と下りのエスカレーターを上りはじめてしまいました。そう、ご想像通り、カルバドスのしみた彼の脚力ではとても登りきれず、ずっと同じ位置で足踏みをひたすら続けるのでありました。結局、下るしかなかったんですけど…。

【大揺れ!シャトー・ディフ】

児玉さんが待ちに待ったシャトー・ディフへ渡る日、番組でごらんの通り、雨と風で渡航不能。急遽、近くの島で児玉さん憧れの島を眺めることになり雨の中、乗船です。この船の揺れはすごかった。児玉さんも教授もびしょ濡れになったのですが、画面ではイマイチ揺れていなかったでしょう?これはカメラマンがあまりにうますぎて横揺れ、縦揺れをその強靱なヒザと腰で吸収してしまったのです。ちょっとがっかり…。
しかし、憧れの島を目の前にした、少年の日を想う児玉さんの表情には、打たれるものがありました。

【もっといろいろ……】

その後もやはり教授がプチ失踪したり、なぜか和食を食べまくったり、レンタカーが借りられなかったり、ブイヤベースを食べ過ぎたり、夜のマルセイユを何故か戦車が疾走したり、モンテ・クリスト城で感激したり、グラン・ヴェフェールでの灰皿騒動(何だ?)といろいろあったのですが、ここでは書ききれませんので悪しからず!

【エンディング・パンテオンへ】

そんなことで(どんなことだ!?)いよいよエンディングの撮影になりました。今回は幸せなことに、ほとんど構成順に撮影を出来たので、エンディングを撮影すると、終了となります。
デュマが安置されるパンテオンの地下室へ、みんなでしずしずと降りていきました。さすが、フランスを代表する偉人たちが永遠の眠りについている場所だけあって、荘厳な雰囲気が漂います。お二人もさすがに静か…。
やっと探し当てたユゴーが眠る個室。ここにデュマが入るのです。個室の入り口から静に撮影をしていると、教授がいきなり女性警備員ににこやかに話しかけ、瞬く間に個室に入るOKをもらってしまいました。(もちろん、事前には許されていませんでした)そして画面であったようなお柩にスリスリ状態になったのです。教授にはまったく恐れ入りました。

【旅に出ましょう!】

そんなこんなで無事!?ロケ終了しました。帰りの飛行機の機体も異常なしです。番組も無事完成し、みなさまの画面にお二人の登場となったわけです。楽しそうに見えても結構大変なんですよ、テレビづくりも。(でも今回のロケはお二人のおかげで本当に楽しく、意味のあるものになったと自負しております。)

最後に一言。
文豪を巡る旅は、フランスの歴史の流れを、まさにそのまま肌で感じることの出来る素晴らしいものでした。デュマファンの皆さん、是非、旅に出ましょう!でも、乗り物にはくれぐれもお気をつけ下さい。

<文/アズマックス プロデューサー:新村勝弘>

*ナレーションにNHKアニメ三銃士でコンスタンス役の声優さんだった日高のり子さんを起用された理由について尋ねたところ、「みんなの話し合いで決まりました。声質やキャラクターで選びました。」とのことでした。<Louis>

●反響いろいろ(「銃士広場」書き込みほか順不同)

◆デュマがパンテオンに移葬される前、11月ごろにロケされたのでしょうが、11月のフランスはかなり寒そうでした。
個人的には自分が行ったことがある、モンテ・クリスト城をまた見られたのがうれしかったです。(あの館はたった二年で手放してしまったんですね…デュマらしいですが^^;)三銃士やモンテ・クリスト伯、そしてデュマについて熱く熱く語る、篠沢教授と児玉氏のお姿が、物語ゆかりの地にも増して印象的でした。<270 なるせまやこ>

◆昨日の特番録画しながら見ましたが、ナレーションが日高のり子さんで、声を聞いた瞬間これはもうハマりすぎ!と感動してしまいました。三銃士の説明で「ダルタニャン…、アトス、アラミス、ポルトス」と語られたとき、コンスタンスが彼らを呼んでいるようにしか…!(望む!アニメ三銃士再放送)
三作品を扱った探訪なので、三銃士関連がマンの町とカルム・デショー跡地のみ、なのはちょっと寂しかったですが、児玉氏の思い出話で第二次大戦中の日本では、デュマの本も『敵性文書』として取り上げられていたと知りショックでしたね。(黒岩涙香の『巌窟王』の現物まで出るとは…。)<旨樫いさこ>

◆千と千尋の神隠しと同時にあったのが悔しいかな・・なんて(^_^;)
それにしても・・私の感想としては・・・「篠原教授とお話したいわ〜!!」というものなんですが、みなさんいかがでしたでしょうか(笑)きっと自分も三銃士を訪ねる旅、なんてのをしたらきっとあんな風に目をキラキラさせて熱く語るんじゃないでしょうか(^o^)丿デュマが眠るであろう場所も見られて嬉しかったですvv
旨樫さん同様、日高さんのナレーションにもドキドキしました!!そしてテロップのるいさんのお名前にも♪1時間と短い時間でしたが、とってもわくわくの1時間でしたvv <295 水野あやか>

◆シャトー・デュフ、映画でも凄かったけど波が高く臨場感ばっちりでしたね!文学を愛する先生方の楽しいお喋りにうなずくばかりでした。<だるたにゃん>

◆いや〜裏の大好きな「千千」を途中にしてまでBSにチャンネル変えました。
なんだか、クイ●ダービーの教授のイメージで見ていたので初めびっくりしました(笑)なんか、三銃士を読んだ頃のことをお二人で話しているところが印象的でした。二人とも少年のような目で楽しそうに語っているので、こっちまで本を読んでいた頃にもどったような、わくわく気分になれました。いいなあ・・・ああいう感じの二人旅っていいですね。
私も今度フランスに行けるようなことがあったらマニアック巡り(笑)をしたいです・・・(1回目はベタなとこしか行ってない)<67 カール碓空>

◆とても良かったです。オシャレな感じで。友人と旅をしながら語り合う所なんかは、とっても自然で楽しそう。これを観てた人は、“フランスって奥が深いな”って友達同士で旅行する人達が増えたりして、フランスってばワインとヴィトンだけじゃないんだゾと(笑)。<248 なあみつや>

◆篠沢先生と児玉氏が銃士人形で遊んでいらした様子がとても身近に感じられて印象的でした。私が資料提供したのは、お馴染み「デュマ大全」の挿絵(「三銃士」マンの宿屋&ダルと肩組む三銃士「モンテ・クリスト伯」ファリア神父との出会いほか)の一部ぐらいですが、やはりプロが撮影すると格調高くできるのだなと感心してしまいました。<19 いせざきるい>

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