私の提案
私は、犬の「血統書」それ自体には何ら魅力は感じません。しかし血統は大事だと思っています。
そこには自分の犬を知るうえでの重要な情報が秘められていると思うからです。その情報の中には
CLやCHDといった遺伝性の疾患ももちろん含まれています。
ブリーダーからボーダーコリーの子犬を購入する予定の方は、以下のよな質問をされることを提案します。
ちなみに、ボーダーについて書きましたが、これはボーダーに限らず、ほとんどの項目は各犬種共通だと
思います。必要に応じて心臓疾患(キャバリア、G.レトリバーなど)、てんかん(各犬種)等についても
聞いてみる価値はあるでしょう。
1.子犬は定期的なワクチン接種と駆虫がなされていますか?またその証明書を見せてもらえますか?
2.子犬の現在の食事管理の状態を話してもらえますか?またはそれを記録したコピー等がありますか?
3.何か問題が起こったときはアドバイスしてもらえますか?
4.子犬は血統登録されていますか?そしてそれはどのような団体ですか?
5.子犬はどのような環境で過ごし、今までにどんなトレーニングを受けていますか?
6.子犬の両親犬の性格はどのようなものですか?彼らに会わせてもらえますか?
7.母犬は何度目の出産ですか?出産経験がある場合その犬たちはどんな様子ですか?
8.この子犬はCLやその他の問題に対してどのような(どの程度の)リスクが考えられますか?
9.子犬の両親犬はCEA(コリー眼異常)の検査を受けていますか?子犬たちは検査を受けていますか?
そしてその結果はどうでしたか? 何か証明書となるものを見せてもらえますか?
10.CHDやPRAといったその他の遺伝性疾患に対し両親犬は検査を受けていますか?その結果は
どうでしたか?何か証明書となるものを見せてもらえますか?
11.この子犬たちの兄弟姉妹、親戚関係で何か問題を抱えている犬はいますか?
12.子犬のトータルの値段はいくらになりますか?
さて上記の質問事項ですが、自分がブリーダーであったらどう答えるでしょうか? 私自身は「まだまだ
勉強しなければ」というのが書きながらの実感です。また「こういうことも必要では」 という点がござい
ましたら、遠慮なくお聞かせください。
しかし、実際にはこの質問に全て明快に答えをだせるブリーダーを探すことは、何もボーダーコリーに限らず
正直な話、今の日本では大変困難なことでしょう。また、往々にして「とても聞きづらい」という雰囲気が
支配している場合もあります。そういった場合、とにかくCLについてはリストが公表されていますから子犬を
迎える際には、必ず両親犬の血統書だけでも先に見せてもらうことをお勧めします。コピーを送ってもらい、
BCCNSW公表のリストでチェックしてみましょう。(できれば5代祖くらいまで遡れると更に良いと思います)
ブリーダーサイドにおいては、上記のような質問に対して明確に解答できるような繁殖を行うとともに、
遺伝性疾患の発症時期(CHDの場合早ければ4ヶ月ほどから、CLの場合であれば、18ヶ月くらい
までの間)を考慮し、できれば最初の繁殖を雄雌ともに2歳以降に設定すべきと考えます。
2歳を超えていれば、OFA等の正式な診断も受けられますし、何より直接子育てをする母犬自身が
精神的にも成熟しているでしょう。同様に2回目以降の繁殖も、前胎犬の成育状態を十分把握できるよう、
2年ほど間隔を空けての交配が望ましいと考えます。このペースでいくと、雌の生涯で3回、せいぜい4回の
繁殖が限度でしょう。
さて、ブリーダーはその時点で、できるかぎりのベストをつくした繁殖を行うべきですが、それでも生き物
というものは、遺伝というものは、大変複雑で予想しづらいものであることも確かです。
受けられる限りの検査を受け、血統を調べ上げ、万全を尽くしても、思わしくない結果が出てしまうことも
あり得ます。
そう、両親がOFA検査でナンバーを取得していても、CHDの犬が生まれることはあるのです。
「では、そんな検査など無意味ではないか?」そうでしょうか?私はそうは思いません。少なくとも
発症しているとわかっている犬を確実に繁殖計画から外すことができます。そして「発症」の有無は時として
専門家の診断でしか判明しないような微妙なものであるからです。
では、ブリーダーは?買い手側はどうしたら良いのでしょう?
私は「必要な契約を文書化し、書面で交わすこと」をこれからブリーディングを目指す方に提案いたします。
つまり契約書の作成です。
短期的な保障だけではなく、1年、2年、あるいは生涯?においておこりうる問題を明文化し、そして
書面での契約をかわすのです。新オーナー側は、将来その犬に何らかの遺伝性疾患等が発症した場合、
ブリーダーが何をしてくれるのか?がはっきりわかります。またブリーダーサイドにおいても、ベストを
つくした子犬を「いつの間にかどこかに転売されてしまった」等の不利益を抑止することも可能でしょう。
(無断転売の禁止)「どういった場合に、保障が無効になるのか?」などといった事項も必要でしょう。
(たとえば、遺伝性疾患の検査をせずに譲った相手が勝手に交配してしまった場合、、、等々)
私は今回アメリカのブリーダーから子犬を購入しましたが、簡潔で良心的な契約書を取り交わしました。
そしてこれは、アメリカのいわゆる「シリアスブリーダー」と呼ばれる方々の間では当然のことであり、
おそらくヨーロッパも同様でしょう。
契約内容は各ブリーダーで様々でしょうが、ほとんどのシリアスブリーダーが、書面で記した遺伝性疾患が
その犬に現れた場合、代金の返却(避妊、去勢の義務付けとともに)または代換え犬の提供(その犬は引き
取る)を契約するようです。また飼育不可能になった場合の連絡義務と、その犬の将来を決定する最初の
権利はブリーダー自身にあると規定していることが多いようです。
つまり、「飼えなくなったら返して」というものです。どうでしょう?もし、日本でもこういった姿勢が
犬の繁殖、販売を廻る場で一般的になれば、安易に「犬を繁殖しよう」という人たちの抑止力にならないで
しょうか?
購入する側にもその意識が浸透してくれば、とかく情が移りやすく、一旦飼った犬を手放せない日本人気質
とはいえ、犬の引き取りをクールに要求してくる人が現れないとは言い切れません。HDのシェパードが
2頭も3頭も戻ってきてしまうという事態にもなりかねないのです。そんな非常な(笑)事態を覚悟
してまで、「その犬を交配、繁殖する必要が本当にあるのでしょうか?」
逆に言えば、それだけの覚悟を持って繁殖されているブリーダーは信頼度の一つの目安になるのでは
ないでしょうか?
それとともに、各蓄犬団体様にお願いしたいのは、リミテッドレジストの承認です。
一胎の子犬全てを「何でもアリ」(繁殖、ドッグショーへの出陳)の登録にするのではなく、ブリーダーの
判断で「この子犬は限定登録にする」というものです。限定登録の子犬には血統書は発行されますが、
この血統書は全登録(フルレジスト)の血統書とは異なり、その犬が成長して繁殖を行っても、生まれた
子犬には血統書は発行されない(登録を認めない)というものです。限定登録といえども、アメリカ(AKC)
の場合はオビディエンスやアジリティー等の競技会に出陳したり、タイトルを取ることはできます。
また、途中での変更(犬の様子を見て限定を解除する)を認めている団体も欧米では多いと思われます。
ブリーダーにその選択をゆだねる裁量を、各蓄犬団体様が持っていただければ、ブリーダー、オーナー
双方の意識も更に向上するのではないでしょうか?
最後に、その両親犬や子犬自身を気に入っているのなら、最後の決断をくだすのは「子犬を迎える人自身」
です。どうぞ、納得できる選択を、、、
ブリーダーは、新オーナーが望むなら、できる限りのサポートを惜しむべきではありませんが、決して
過干渉であってもいけないのです。相談されれば援助し、時には一緒に問題を考え、そして「自分の繁殖
した犬の成長を何らかの形で見届ける」そういう姿勢であってほしいと思います。
理想かもしれませんが、、、私もできることなら、そういうブリーダーになりたいと思っています。
2001年 3月末日