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これから

「できる限り健全な繁殖を目指したい。」それはもちろん大事なことです。このことは今後も
変わることはないでしょう。それはさておき、「これから」のことです。

信頼している犬友から、「あなたのブリーディングに対する条件はよく理解しました。では、
どんな犬を作りたいと思っているのですか?」と聞かれました。またこうも聞かれましたっけ
「スタンダードについてはどう考えていますか?」

私はこのことをずっと考えています。ジャーマンシェパードについては、この先も私が繁殖を
志すことは決してないでしょう。この多産で大型、活力溢れる聡明な甘ったれ犬を、今まで
述べてきたような条件のもとに繁殖する知識も経済的な余裕も私にはないからです。

では、ボーダーコリーは、、、? ハイ。いつの日かチャレンジしてみたいと思っています
「繁殖をする。」ということは、命を生み出すことであり、当然責任のある仕事です。また、この
聡明でエネルギッシュなブリードをつくりあげた先人たちの想いを受け止め、活かすような
ものでなければとも思います。

世界には多くのワーキングブリードが存在します。「人と一緒に人の為に働く犬」たちです。
いま現在この世に見られる多くの犬種の発生には、すべて何らかの意味と必要性があった
わけです。では、ボーダーコリーをボーダーコリーたらしめているものはなんなのでしょう?

親交のあるアメリカのブリーダーは言います。
「I breed for the "utmost" natural working ability in our dogs」
では、ボーダーコリーにとっての「the "utmost" natural working ability」とはなんでしょう?
それはもちろん「herding」能力に他なりません。彼らにとってのボーダーコリーのスタンダード
はこれだけだと言っても過言ではないのです。もちろんそれではherding能力さえ高ければ
どんな犬でもボーダーコリーになってしまいます。ですから、これは彼らの生まれ故郷である
英国のISDS(International Sheep Dog Society)に登録された犬たちをベースに「natural
working ability」を重視して繁殖されてきた犬たち。と、私は考えることにしています。
(もちろんこの考え方には、異論や疑問が入り込む余地があるでしょう)

しかし、この日本で本来の彼らの能力を生かせる「herding」の仕事につける幸せな犬がどれ
くらいいるでしょうか? 多くは家庭犬として愛され、信頼できるドッグスポーツのパートナーや、
良きコンパニオンとして生きていくことになるわけです。では、その犬たちに「herding」の能力
などいるのでしょうか?
私の答えは「Yes」です。他の繁殖家の方はわかりませんが、私が繁殖したいボーダーコリーは
やはり正しくこの能力を有していて欲しいと思います。

私がここでいう「herding能力」とは、ある犬が人と共に行う作業において、「ひとつの磨き上げ
られた形」
であると考えています。この複雑な作業を行う上で、要求されるエレメントの数々を、
(オーナーのやり方さえ間違っていなければ、もしくはたとえ間違っていたとしても)トレーニング
によって身に付けられる下地(ベース)を持っていて欲しい。ということです。では、それを
どのようにして「自分の繁殖する犬に保証していくのか?」 このことは今後の私にとっての
大きな課題になっています。ただ、それが以前のように「トレーニングチャンピオンをとる」的な
ものでないことはハッキリしているのですが、、、


ISDSの伝統あるトライアル「シュープリーム インターナショナル チャンピオンシップ」をビデオ
で見ました。それは素晴らしい光景でした。犬たちはみな、どれも非常に集中しつつも冷静に
状況を判断し、美しいワーキングスタイルを披露しています。もちろん必要に応じて自分で考え
行動する能力も持っています。またほとんどすべての犬たちが、作業に適した骨格と筋肉を
持っていました。

この犬たちの子孫が良き家庭犬になれないはずがありません。 羊を追える環境になくとも、
「人に従おうとする心」は、良き家庭犬としての重要な性質であることは間違いないのです。
「常に人の方を向いていて、自制心と抑制を身に付けた犬」。そして、もちろんそれは、
その犬を持った人の資質や努力よるところが大きいことは言うまでもないのですが、、、
まずもってそのベースを持っていること。その点を私は重視したいと思っています。

KCやAKC、JKC等のケネルクラブが決めたコンフォメーションに対するスタンダードは、
今では私の中では以前のように重要度の高いものではありません。複雑な作業をこなして
いくことに重きをおいて繁殖していけば、自ずと体型は各ケネルクラブが推奨するものから
遠く離れることはないと思うようになったからです。そしてスタンダードの文章そのものには
解釈の幅があり、曖昧な部分が存在しています。私の2頭のボーダーコリーは見かけの印象
は異なりますが、それぞれの犬を目の前にして、スタンダードを読み比べたとき、2頭は著しく
その文章からはずれてはいないのです。ところが、この2頭はその動きも、外観の印象も
歴然と異なっているのです。つまり、この2頭は繁殖に際し、繁殖者が強く意識したものが
異なった結果
だと思っています。

「スタンダード」という概念が一般的に意識される場というのは繁殖の現場と、もうひとつは
ショーリングにおいてでしょう。このショーリングというものを意識したとき、人は違う道を歩き
始めて行くのかもしれません。そしてそれが良いことなのか、どうなのか今の私にはわかり
ません。多分この先もきっと答えはでないでしょう。

私が今の時点で強く意識していることは「トータルなバランス」ということです。
「herding」という作業を通じて培われた、人への従順性、レスポンス、判断力、行動力、機敏な
動作、安定して作業を続けられる持続性、耐久性、そしてそれら、"人が"、または"犬自身が"
要求するエレメントの数々を瞬時に行動に移せる体躯を持っていること。それらのバランスが
より高い次元で調和していること。
そこへたどり着くために、私ができることをずっと考え続けて
います。

今でも、「こういう犬を作りたい!」というハッキリした理想像が描けるわけではありません
けれど、はるばる海を越えてやってきた1頭の犬(Heath)、この愛情深い小さなチョコレート色
の犬が私に何かをもたらしてくれるかもしれないと思っています。
この犬が私を魅了するものが何なのか?それがわかれば、、、と、そして、、、
この犬を大事に育てること
。そのことが「これから」に向けて今、私ができることなのだと
思っています。

2001年 6月